(美紗ちゃん、雰囲気変わったよなあ)
隣室の美紗を見かける度に、あいりは感じていた。
女の勘は鋭い。
同性の髪型やメイク、肌の色や会話の端々に出る雰囲気に敏感だ。男が気づかないことでも気づいてしまう。
(確か、彼っぽい人がこの前部屋に来てた気もするけど、その人のせいかな)
女は男で変わる。
変わるのを喜びとする女も多い。美紗の外見や仕草に以前と違う点は見受けられない。だが、近い距離で話す時に感じる雰囲気が以前と違う気がする。具体的に言えば、艶っぽくなった気がするのだ。
(私が最近エッチしてないから、そういう風に感じちゃうのかも)
ため息を付くと同時に、あいりは美紗についての回想を止めようとした。他人の男関係をあれこれ想像したところで何の特にもならない。
(美紗ちゃん、してるのかなあ、あの人と)
友人の男関係について想像しても仕方ない。そう思いながらも、さらに妄想を膨らませるあいり。
(はあ……したいなあ、えっち)
夜、一人で過ごしていると人肌恋しくなってくる。昔は子供じみた甘えから男を欲していた。だが今は、男の味を覚えてしまっていた。身体の疼きを、少女趣味な恋愛への憧憬で満たす事は出来なくなっている。
(欲しい、おちんちん……おちんちん、舐めたいよお)
指と舌で全身を愛された後、与えられた悦び以上のお返しを口と指を使い、相手のペニスに与える。我慢出来なくなったら、四つんばいになり、媚びるような雌猫声で挿入を求める。貫かれながら、あらゆる淫語を口にし、相手と自分の欲情を煽り、さらに深く激しい快感を得ようとする。そんな時間と相手が、欲しくてたまらなくなっていた。
(もうこんな事考えるのヤメ!ご飯食べなきゃ)
淫らで非生産的な妄想を中止したあいり。
一人きりで食事を済ませ、壁に寄りかかり、ボリュームを落としテレビを眺める。壁の後ろが美紗の部屋だ。彼女が部屋にいるのか、外出しているのかは分からない。
(ん?)
美紗の部屋から、会話が聞こえてきた。
壁越しに、人の動く気配がする。
(美紗ちゃん、いるんだ)
時折感じる、壁の向こうの美紗の動き。疲れや寂しさを感じる夜、隣室で親友の美紗が立てる生活音にホッとさせられ、人恋しさが紛れる時も多い。
しかし、今夜はいつもと雰囲気が違う。
(え!な、なに)
壁から漏れてくる隣室の音に、神経を集中させた。
「……だろ?……な、美紗」
明確には聞き取れないが、男性の声が漏れてくる。低く、くぐもっているが、男の声が美紗の部屋から漏れてくる。
「言えないよ、言えない。お願いここでは無理なの、許して」
続いて聞こえてきた女性の声は、間違いなく美紗の物だ。
(やっぱり彼ができたんだ、美紗ちゃん)
一人暮らしをしていて、男が出来れば部屋に呼ぶのが当然だろう。あいりだって以前、彼氏を何度となく部屋に招いたのだから。だが様子がどうも変だ。二人は会話をしているのだろうが、どうも日常会話を交わしているような感じではない。
(まさか!美紗ちゃん)
普段とは違うトーンの美紗の声それはまさしく、交わりで発する嬌声だった。
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